7月へ
明日はツアーの最終日。
最終日とは言え、なにかが終わるわけでもなにかが始まるわけでもないのだけど。
今日は昼間、長女が参加している小学生バンドの練習を見に行ってきた。
もうすぐライブがあるので最終練習なのである。
小学生たちの演奏はとってもたどたどしくてズレたりあったりまたズレたりしながらにこやかにグルーヴしていってて、聴いていて気持ちがよかった。
バンドというのはこれだよな、と思った。
女の子同士がプレイしながら、にっこりと微笑み合う、ストーンズばりの瞬間も見れた。
自分がバンドをやっていくうえでの栄養をすこしわけてもらった気分だ。
渋谷クアトロではぼくたちの前に親友の尾崎友直が短いライブをやってくれる。
ツアー中にも、彼とはメールのやり取りをしたり、会話したりして、助けてもらった。
最後にステージで出逢えることがとても嬉しい。
*2012.7.1 曽我部恵一BAND LIVE @渋谷クラブクアトロ
17:30 OPEN
18:15 尾崎友直 LIVE
18:
曽我部恵一BAND
夜のお供に
曽我部恵一BAND「サーカス」のMVが完成しました。
今回もぼくが監督をしました。
この曲はイメージを限定したくなくって、なかなかむずかしかった。
こころの中にある初夏の夜を想いながら、夜の東京観光をしながら撮影した。
東京には、まだ、ぼくの知らない表情がいっぱいあるんだなあ、などと感じたり。
そして、この曲のスペシャル7インチシングルは、明日(6月29日)の曽我部恵一BANDワンマンライブ@大阪梅田クラブクアトロの会場から販売します。
追記
コメント欄にセンチメンタル通りさんが甘酸っぱい素敵なエピソードを届けてくれました。
確かにこの曲は自分にもいろんなイメージを喚起させます。
特定はできないけど、そんないろんな想いが放流のように流れていくのです。
みなさんのイメージもぜひ教えてください。 2012.7.1
夏の楽しみ あなろぐ&さにーでい
なかなか素敵なアナログ盤が二枚リリースされます。
すでにアナウンスされていますが、曽我部恵一BAND名義の10インチと7インチです。
10インチはDJヨーグルト&コヤスによる「スウィング時代」と「STARS」のリミックス盤。
ソカバンをいつも応援してくれているヨグさんが大好きな二曲を、思い入れたっぷりに再構築してくれました。
仕上がりのほうは聴いていただいてのお楽しみですが、こういうリミックスはお仕事と言うよりも、友からのプレゼントのようで、なによりもいつも自分が楽しみなのです。
7インチはアルバム『曽我部恵一BAND』に収録されている「サーカス」という曲。
この曲はアルバムの中でももっとも個人的な曲がします。なんのことを歌っているの?とたずねられても、うまく答えられません。
ただじぶんのなかにずっとある風景なのです。だからこの曲が大好きで、アルバムからそっと誘い出して、別のかたちでもたずさえておきたかったのです。
ジャケットはポスター仕様にして、いまいちばん好きな漫画家のふみふみこ先生に絵を描いていただきました。
こんな豪華なジャケットにシングル一枚だとさみしいので、この曲のライブテイクや別ヴァージョンが入ったCDも付きます。こちらにはスカート(彼の音楽も大好きです!)によるリミックスも収録されます。そしてダウンロードによるソカバンの大塚くんによるヴァージョン(10分を越えるらしい!)も手に入ります。
こんな素敵な2枚です。予想以上に好評いただいて、予約はもう締め切りとなってしまいましたが、追加プレスも検討中であります。
アナログ盤はどうしても限定生産にならざるを得ないアイテムです。
ソカバンの今回のアルバムもそうでしたが、ほしかったのに手に入らないという方たちの声をきくと、胸が痛みます。
と同時に、こうしてアナログ盤を制作していると、アナログ盤の時代は大きなコストとリスクをかけてていねいに音楽を商品として売っていたのだな、ということもわかってきます。
音作りの段階からCDとちがって原音と同じ音に商品が出来上がってくるわけではありません。アナログ盤にカッティングされたときの音を想像し逆算して原音を作るのです。失敗したときのやりなおしにも、おおきな労力が必要になります。
ジャケットも厚紙に印刷し、組み立てるのでコストも時間もCDの何倍もかかります。
出来上がってからも、おおきくてかさばるので、物流的にもなかなかたいへんです。
こうしてアナログ盤をつくっていると、なぜすべてがCDに移行し、今またmp3になろうとしているか、よく理解できます。またそれらの道順はとても理にかなっているとも思います。
でもぼくはこうしてアナログ盤をつくることが大好きなので、続けています。
これからもCDのリリースや配信と平行して、こんなふうなちいさな仕事を続けていきます。
じつはちょっと、こんなちいさな仕事のほうにおおきな意味があるんじゃないかとも、ずっと思っているのです。
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8月8日にサニーデイ・サービスの久しぶりのワンマンコンサートをやることになりました。
場所は東京恵比寿のリキッドルーム。
内容は秘密です。
題名は「夏は行ってしまった」というのにしました。
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アキ・カウリスマキ監督の新作『ル・アーヴルの靴磨き』を観ました。
カウリスマキ監督の映画にはいつも、普通のひとたちの普通の人生が写されています。
でもこんなにドラマチックでやさしいのはなぜでしょう。
観終わると、こころが5グラムくらい軽くなります。家路を急ぐまえに、コーヒーでも一杯飲んでいこうかというような気になるのです。
カウリスマキ監督はなんにもしらんぷりして、こんな魔法をつかうわけです。
遠い渚
『マルグリット・デュラスのアガタ』という映画を観た。
故マルグリット・デュラスが監督した1981年の映画。
新宿の映画館のいちばん前の席で、ぼくは、ひとがだれもいなくなったシーズンオフのビーチに包まれていた。
『アガタ』がどういう作品か解説することはやめておくが、チラシには「極度な非商業性から永らく日本公開されなかった」と書かれている。
こう言われるとビビってしまうが、商業性・非商業性みたいな二元論から遠く離れた、個人的な出発点を持つ映画というだけだ。
海辺の風景。男と女のモノローグ。ただそれだけのこと。
そしてぼくはこの美しさに身を沈めるだけ。
この風景たちをぼくははっきり知っている。
遠い昔に見たことがあるような、記憶の印画紙に焼き付けられた風景。もしくは、いつもどんなときも心に波を作る、だれもいない独りっきりの海。
ノース・マリン・ドライヴ
最近は布団に入ると、枕元に携帯を置いて、ちっちゃな音で音楽を流しながら寝る。
こんな梅雨時には、ベン・ワット『ノース・マリン・ドライヴ』あたりがぴったりくる。
そうしていると、遠い昔のことを想い出す。
深夜のラジオを聴きながら寝ていた、10代の前半の頃の感覚だ。
貧弱なスピーカーに耳をすませば、世界全体の音が聴こえてきた、あの真夜中の感じ。
ちかごろ世では、音質や聴き方捉え方、音楽についてさまざまなことが懸念されているが、なんのことはない。耳を澄ませばそこに音楽はちゃんとある。
ぼくのiPhoneの約2ミリ×1.5ミリのスピーカーから、ベン・ワットのひそやかな息継ぎも、ギターにかかった揺れるリバーブもはっきりと聴きとることができる。
うとうとするころには、彼が立つ寒々しいビーチの波の音までも耳に届くようだ。
しもきたざわこんさーと の おしらせ
今月もしもきたざわこんさーとが開催されます。
雨が降ろうが、風が吹こうが、雪が降ってもしもきたざわこんさーとはシモキタザワ440という場所で毎月第三木曜日に開催されます。
今月は6月21日木曜日。
出演はぼくと、平賀さち枝さん、そして湯浅湾、の三組です。
平賀さち枝さん、さっちゃんのことは、ぼくがちょうど『けいちゃん』というアルバムを出したのとおなじ頃に、『さっちゃん』というアルバムを出した女の子がいる、というので、どうにも他人に思えなくなって(勝手な話ですが)とても気になり始めたのでした。
信頼できるともだちも「さっちゃん、いいよ」なんて言うし、気になりがピークに至った頃に聴いたさっちゃんの演奏は、とても恥ずかしくてこんな表現が許されるかどうか分かりませんが<野に咲く花のよう>でした。
あたらしいアルバムも世の中にあって、しずかにそしてうつくしく咲いています。
湯浅湾は評論家の湯浅学さんが率いるロックバンド。
もう、ロックバンドと言うしかないシンプルで奔放な歌と楽器の演奏がそこにはあります。
簡単な言葉をつかって簡単な演奏をしているのに、聴いているこちらの脳はどこか遠い宇宙のすみっこへ、飛んでいきます。まことに勝手なはなしですが。
謎な歌詞はどこまでも謎ですが、ふと共感してしまいそうになる瞬間があります。
湯浅さんの書かれる文章が昔から大好きで、ぼくは自分を形成するのに大きな影響を受けています。
しかし、当の湯浅さんは、ひとに影響をあたえてるつもりなんてまったく知らんよといった風情で、ひょうひょうとしておられます。
しかし、歌も文章も、すごくていねいだなと思っています。
湯浅学さんの近作、『音楽が降りてくる』と『音楽を迎えにゆく』は音楽評論集ですが、ここ最近読んだ本では間違いなくベストな二冊です。
以上、しもきたざわこんさーとのお知らせでした。
<曽我部恵一 presents "shimokitazawa concert" 第十八夜> @東京 下北沢 440 (four forty) - LIVE - 曽我部恵一
はれのちくもりときどきあめ
ジョン・カサヴェテス『こわれゆく女』を観る。
愛、その目に見えない確かなものを求め、苦しみの中で生きる人たち。
ここに幸せというものがあるんだと、ぼくは思った。
人生の永遠のスタンダードにしたい映画。ジーナ・ローランズはいつだって愛の亡霊のようだ。
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札幌、函館と北海道でのライブを終える。
ツアーも中盤を過ぎ、ようやく自分の歌の軸が決まってきた。
いままででいちばん得るところが多いツアーかもしれない。
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タムくんこと、タイの漫画家ウィスットポンニミットくんのライブにゲスト出演。
ぼくが歌ってとなりでタムくんが絵を描いたり、いっしょに演奏したり。
最後は即興で一曲つくった。
タムくんの絵はホント素敵だ。なんか泣けてくる。
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先月の下北沢コンサート。
とんちピクルスさんがアンコールで歌ってくださった「どうだいドラえもん」をご好意によりYouTubeアップさせていただきました。
人生は終わりなき旅。
あらゆるひとが歌いたがるそんなテーマを、こんなに自然に可愛くやさしく歌った曲も、そうないと思う。