夕べ、新宿で

夕べは「オフィス北野の最終兵器」と呼ばれているマキタスポーツさん企画のライブにゲスト出演した。
お笑いの人だから、ってことじゃなく、人目もはばからず何かに猛烈に向かってる人のハンパないエネルギーを、ぼくは感じた。だから、忘れないように書いておこうと思う。
ぼくはこのマキタスポーツさんのことを、ごく最近知ったのだった。
ビートたけしさんの深夜の番組の特番で、彼は「AVを100本観てAV女優の体を記憶し、顔を見ずに体だけを見て名前を言い当てる」というトライアルをしていた。スタジオで、見事5人のAV女優の名前を顔を見ずに言い当てた彼だったが、その前に流された、彼がAVを観まくって記憶しようとがんばっているVTR。そこに映ったマキタスポーツさんは、なんか人ごととは思えない必死さがあり、芸人さんとは思えない真面目さがあり、とてもじゃないけど笑えなくて、ぼくは何故かドキドキしたのだった。
その直後に、エレキコミック主催のライブでぼくはマキタさんと偶然出逢ったから、思わず「こないだのAV女優のやつ、最高におもしろかったです」って挨拶代わりに言ってしまった。マキタさんは、自分がやってるマキタ学級というバンドのCDをぼくにくれた。
そんなことが、ぼくがマキタさんのライブに呼ばれることになったいきさつである。
彼の「細かすぎて伝わらない矢沢永吉の真似」っていうのはすっごくおもしろい。
それと同じくらい、バンドの曲も最高にカッコ良かった。
彼の歌は猛烈に訴えてくる。
「有名になりたい」「金が欲しい」「オレは最高なんだ」と。
ぼくらはよく謙虚になる。謙虚になりすぎてしまう。
ぼくなんかとくにそうだ。誉められると、「いえいえ」とか言ってしまう。
というか、みんな普通はそうだろう。奢り昂るなかれ、と教えられてきた。
でも、夕べ、うすくなった髪をふりみだし、我こそはポップスターだと叫ぶマキタスポーツを見ていて、ア、ロックってこんなんじゃん!って思った。
生まれつきカッコいいスポーツ万能金持ちのアイツよりも、もっともっと輝くためのイデオロギー、それをロックは知っていた。
早川義夫さんはこう言った「かこいいことは、なんてかっこわるいんだろう」。
つまり、逆も真なり。