ラブレター
さらば、ローズ・レコーズ!
このことを言いたくて、ひさびさに日記を書く。
しかし、「さらば」と言ってしまうと、言い過ぎだ。
ローズ設立以来、ずっといた事務所を引っ越したのである。
この一ヶ月くらい、言葉にならないさみしさがずっと胸のなかにあった。
嬉しいことも悲しいことも感じてきたローズのオフィスを去るべく、物件を探してまわった日々の気持ちだ。
ローズはもう5年も前のある日に、旧事務所の物件と出逢ったことで始まった。
ここでだったらなにか始められる、っていう予感があったのだ。
それは、下北沢の街のちょっと外れにある、商店街が住宅地にゆっくりとスライドするそのグラデーションの中にぽつんとあった。
ガラス張りの小さな路面店のような物件で、パリの片隅の雑貨屋さんのようにも、アムステルダムの洒落たコーヒーショップのようにも見えた。
なによりそこは自分の部屋のようにも見えた。
ぼくたちはその場所で仕事を始めた。
道行く人たちは、ガラス張りの向こうから、不思議そうにこちらを覗き込んだ。
おもしろがってくれる人もいたし、応援してくれる人もいた。
ご近所さんとも、おおむねうまくやってたと信じている。
そのうち、ぼくたちの音楽を気に入ってくれる人たちがたくさん訪れてくれるようになった。
ある日の出逢いから始まったその場所で、またたくさんの出逢いがあった。
だからぼくは、その「場所」に、心から感謝していた。
そんな気持ちで仕事をしていたから、引越しを決めるのは苦汁の決断だった。
旧ローズオフィスは、今はほとんどのモノが移動されてがらんとしている。
なんかかわいそうだ。
ぼくの心もどこか穴が空いたままだ。
あたらしい場所は、そこから遠くない三階建ての一軒家だ。
一階はオフィス。二階はミーティングルーム。三階はスタジオと倉庫。
申し分ない。
じきに引越しも終わるだろう。
またここからいろんなことが始まっていくのだと思う。
個人的に、旧事務所での最後の仕事は、ランタンパレードの最新アルバムのマスタリング。
そして新事務所での最初の仕事は、今度リリースするcheekboneというアーティストのアルバムマスタリング。
それが今日の話。
どちらもこの初夏にローズからリリースされる新作。
ランタンパレードはおなじみだろうが、cheekboneはマイスペースで知り合ったアンビエントの若き音楽家だ。
そのデビュー作は、素晴らしすぎて解説しづらい。
どちらの盤も、ぜひみなさんに聴いていただきたい。
後悔は絶対にしないと、約束します。
今日はハルコと『花より男子ファイナル』を観に行った。
後半、ずっと泣いた。
素敵だった。
そのあと、あたらしいオフィスでソカバンライブ盤の音作り。
明日も過去と未来の間を行ったり来たりする。