日記

新潟の朝。
やっぱりある程度緊張しているのだろう、朝9時前に目覚める。
ツアー中はいつもこんな感じで、喧噪と熱狂のなか、精神がなかなか静まることがない。
しかしこの情況のなか、淡々としていられるのが、ぼくは理想なのである。
ホテルの一階にある喫茶店で朝食をとる。
たっぷりのサラダと分厚いトーストに半熟の目玉焼き、そしてサイフォンでいれられたコーヒー。丁寧につくられた朝食だ。

夕べはこれまたなかなか寝付けず、明け方までコンピレーションに入れるための自分の曲をレコーディングしてた。
当初は「SECOND LOVE」という曲を予定していたのだが、「十二月」という曲を録った。BBSにその曲についてのリクエストがあって、ぼくは2年前に作られて放っておかれてたその曲のことを思い出したのだ。冬の美しい夜に、眠りについた愛する人を指先でさわるシーンを歌った静かな曲。クリスマスのコンピにはこれがぴったりだと思う。もしこのテイクが採用されれば、ぼくにとっては、初めてのホテルでのレコーディング作品になる。
今朝起きてそのテイクを聴いてみる。加湿器の水が沸騰する音が、雨音と混ざり、映画のような効果を出していた。悪くないだろう。

朝食を食べている最中にも地震があったようだ。テレビは地震速報に切り替わり、震源地やマグニチュードを伝える声が低い声で店内に響く。新潟市内の揺れは小さかったようで、ぼくは何も気づかなかった。長岡のほうでは強く揺れた模様。店主の初老の女性は淡々と自分の仕事を続け、ニュースをかえりみる様子もない。しかしそこには、きりきりとした緊張が張りつめているのが分かる。新潟の街全体にそのようなものを感じた。
その女性が丁寧に作ってくれた朝食は、とてもおいしかった。

ホテルの部屋に戻り、今日のライブの練習をしていると、フロントから電話。水は出てないですか?と言う。いいや出てませんけど、とぼくは答える。上の階で水漏れの事故があったらしい。念のためにぼくも新しい部屋に移される。レコーディング機材がたくさんあったので、ボーイさんに手伝ってもらってのささやかな引っ越し。
あてがわれたのは、びっくりするくらいに広くてきれいな部屋だった。