日記

妻帯者の友だちが、自分の配偶者を人まえで呼ぶときの呼び名について。
これには男性それぞれのパターンがあって、それぞれの呼び方がもたらす印象も微妙に違ってくる。

ある人は「奥さん」。そういえば、○○くんは例外なく「オレの奥さん」と呼んでいるな。かわいくって、いい感じである。
で、ある人は「よめさん」。全体的にはこれが実はいちばん多いような気がする。

断っておくが、これらは配偶者不在の前提で第三者に対して使われる呼称であって、実際に配偶者同席のもとでは、このようには呼ばれないだろう。そのときは「△△ちゃん」とかだろう。
であるからして、ここには男性の持つ配偶者への理想と現実のイメージ、さらには第三者に抱かれたい自分の配偶者のイメージが複雑に混ざりあった像が存在する。しかしそれは呼び続けることで定着し、いずれは自分が最初に結んだ像を離れてただの記号と化してしまう。
よって最初が肝心だ。
かく言うぼくは結婚5年目にして、まだ人まえでの配偶者の呼び名を特定できていない。人まえでも「モモちゃん」と呼んでしまう。これではさすがにまずいので、ぼちぼちどう呼ぶかを決めなきゃなと思っている今日この頃。

話しを戻そう。

「よめさん」と呼ぶ男性がぼくの回りには多い気がするが、やはりこれがいちばん当たり障りのない呼び方なのかもしれない。持ち上げもしなければ、ことさら落としもしない。ぼくもこれを使うことがある。でも、悪く言うと無味無臭な感は拭えない。
例えば「およめさん」と「お」を付けるだけで、が然朴訥にファンタジックになり、物語りが立ち昇りそうになる。これはオススメかも。そして「さん」を取ってしまうと、「よめ」となって、あえて外向きには愛情を感じさせないという空気が漂うので、個人的にはよろしくない。
先日、仕事でいっしょになった男性(30代半ば)は「よめはん」と言っていて、これも一字違うだけだが、ずいぶん印象が変わる。はっきり言って可愛い女性を想像できない。

次に「妻」。これはなんかきりっと真面目な印象。あと、ちゃんと制度的なことも想像させる。英語で言うところの”ワイフ”みたいな感じ?
実はぼくは以前、これで通そうかと考えた時期がある。が、実際何度か使ってみるとなんとなく自分にしっくり来ず、むずがゆいので、それ以来使用をひかえている。

歳上の方たちが使う「女房」という言葉には格別の暖かみを感じる。「女房」、美しいひびきである。
柔らかくも強い、きれいな日本女性を連想させる。幻想的であると同時に、実存的でもある。
しかしさすがに自分の年齢じゃ言いづらい、と一瞬躊躇してしまいそうになる。が、なんとぼくのDJの友だち(30代半ば)は「オレの女房が」と言っていて、堂々と放たれたそれはなかなかさまになっていた。
ぼくも「女房」でいってみようかなー。

あとクラシカルなところで言うと、「家内」とか。これはさすがに自分で言うと笑っちゃいそうなので、却下、却下。

他にもいくつかあるだろうが、はしょらせてもらって、最後に「かみさん」を。
これは「よめさん」の系譜にあるのだろうが、それより頭がちょっとだけ上がらない感じがあって、いい。少しだけ男性を可愛く見せる。
そう!あの、刑事コロンボの口癖、「ウチのかみさんがねぇ」。
おそらくアメリカ英語とは関係のない「ウチのかみさん」という言葉が、小池朝雄さんのあのいい声で発音されたときの、この優しさ。そこに吹く風よ。これこそが日本人がコロンボという男に抱く、ちょっと可愛く、しかしその実は知的な愛すべき男性像の源であろう。
うん、「かみさん」、なかなかいい!



しかししかし、まだまだ思案中なぼくなのであります。