SMALL CHANGE STORY

sokabekeiichi_diary2007-09-16

家族と新宿へ。
伊勢丹の一階で、なんとなく財布やバッグを見て歩く。
モノを入れとくものなのに、その値段は天井知らずでおもしろい。
新宿は、金で買えるものならなんでもありそうな街だね。

    *         *        *

数日前、下北のユニオンの100円箱で買った一枚の12インチ。
PHIL LINTONって人の「DON'T STOP」って曲。
ジャケットが放つバイブスでつい買ってしまった。
裏ジャケには子供を抱いてにっこり笑う黒人男性の写真。
でも全体の雰囲気はメロウでさみしげ。タイトルは「ドント・ストップ」。
レーベルはBASEMENT JAXXのATLANTIC JAXX。
こりゃ、いいかもしれない、と。

家に帰ってレコードに針を落とす。
エレピが気持ちよくはねるミディアムなハウストラックの上を、緩やかなヴォーカルが漂う、素晴らしいソウルナンバーだった。
しかし裏ジャケのクレジットを見てるときに、ある表記が目に入る。

THIS RECORD IS DEDICATED TO THE MEMORY OF PHIL LINTON

このレコードをフィル・リントンの想い出に捧げる、ってことは、もうこの世にいない人なのか?
しかし、昔の曲の再発じゃなさそうだし。
いろいろ考えながら、何度もその不思議にメロウな曲を聴いたのだった。

ATLANTIC JAXXのホームページを見ると、事の次第が分かった。
でもそれは、ぼくが想像したこととあまり違わなかったのだが。
ベースメントジャックスのフェリックスがフィル・リントンのこの曲に耳をとめ、レーベルでのリリースを決めた。だけど、フィルにとって最初のリリースになるはずだったこのシングル盤の発売を待たずに、彼は心臓発作で帰らぬ人となってしまう。期せずしてこれは彼の最後のレコードになってしまう。

ぼくはずいぶんセンチメンタルな気持ちになって、この曲を聴き続けた。

「止まらないで。太陽が沈む前には。あきらめないで。未来はぼくらの手にあるよ」
そんなふうにフィルは歌い続けた。