ぼくのブックレビュー
素晴らしい音楽本を二冊読んだ。
直枝政広「宇宙の柳、たましいの下着」と、ECD「いるべき場所 In The Place To Be」。
この同年代(直枝・1959年、ECD・1960年生まれ)のふたりのミュージシャン。彼らが音楽について書くというだけで、まずはそそられる。
音楽の濃い部分をずーっと追いかけ、そして体現してきた、日本でも有数の「信頼できる」ミュージシャン。
店頭で内容をパラパラやるまでもなく、すぐに手に取りレジへと直行できるのは、おふたりが今までやってきた仕事の確かさがあるからこそだ。
偶然にも、この同時期に出版された二冊の本は似たコンセプトを持つ。
個人的(または世界的)音楽史をたどりながら、自分のことを語っていく。
人生が音楽とともにある人間にしかできないアクロバティックな自伝。こういう方に音楽を語ってもらうと、間違いない。
直枝さんは饒舌に、ロックの亡霊を語る噺家のようだ。
ECDはまるで社会学者のように、ロック的なるものの核が、時代のなかで様々な場所へ移動し続ける様を淡々と追う。
おふたりともさすが同年代で、同じアーティストに触れる瞬間もあるが、それは読んでのお楽しみ。
とにかく、あなたの今後10年くらいの音楽地図になるくらいには、どちらの本もおもしろいだろう。
ロックジャーナリズムという名の音楽批評が終焉をむかえ、音楽紹介のカタログ化に歯止めがかからない今、このような「音楽のなかで生きる張本人からの報告」がいかに重要でリアルかを噛みしめよう。