without a word


コンサートというのはたいていの場合において夜に始まるものである。

あったかい風呂につかるのとおなじで、最高の音楽を体いっぱいに浴びたあと
「さあ、仕事しよう」
とはならないからである。

今夜、ライブ会場でそんなふうに思った。




下北沢440で、groupのライブを聴いてきた。
仕事を大急ぎで終わらせ会場に着くと、いつもの5人の男たちが、ステージ上にちょうど現れたところ。

煙草をくわえ、ビールを片手に、かったるそうにセットアップを終わらせる。
そのうちにDJの音楽がフェイドアウトし、うすぐらいステージから、透明なエレキギターの音が聴こえてくる。
groupの演奏が始まったのだ。

2本のエレキギターとベース、トランペットとドラムが紡ぐあやふやな物語りに、ぼくたちは飲み込まれていく。

あとはずっと力強くて儚い、ぼくらの日々を描いた波間のうえを漂っていた。


深い哀しみと喜びをたたえたその音楽は、ぼくらのなかにゆっくりと入ってきて、明日には生きる勇気となっているだろう。



仕事を終わらせてgroupの演奏を聴きに行く。

こんなに幸せなことが2010年の日本にあるのだ。