日記

sokabekeiichi_diary2004-11-13

はじめて訪れた函館。美しい港街。
風が冷たくて気持ちいい。こんな風は日本のどこにも吹いてないだろうな。

今夜も最高の夜を過ごさせてくれた函館の美しいオーディエンスに、愛をこめて感謝を捧げます。
どうもありがとう。

夕方。陽が沈みかけた函館でのワンシーン。
リハーサルとショウのあいだの空き時間、ライブハウスのまわりを散歩してたぼくたち。
ぼくはふとジャズ喫茶でコーヒーでも飲みたくなる。
そう思ったとたんに目の前に”ジャズとコーヒー”の看板。「BOP」というそうとう年季の入ったジャズ喫茶を見つける。
植木と一緒に地下へと続く階段を降りる。階段の壁にはものすごくクールなマイルスの特大モノクロ・ポスターやドン・チェリーの来日時のポスターなどが飾ってあり、ただならぬアトモスフィアを発している。
店への扉を開け足を踏み入れると、そこはぼくの予想を遥かに超えるメロウな空間だった。
飴色に輝く木の壁には古い柱時計が無数に掛かっている。そして部屋中に置かれた様々なアンティーク。年代を感じさせるコーヒー・テーブルとガラス板の間には、国内外の様々なジャズ・ミュージシャンがこのお店のマスターに宛てたポストカード群が。そのなかには白石かずこさんの名刺なんかも見える。なによりオレンジ色の明かりで満たされた空間に充満する、深いJAZZの匂い。
これぞオレが探し求めてたジャズ喫茶じゃないか、植木くん!
そこへ上野と大塚が合流。
さりげなく貼られたポスターを眺めていると、様々なミュージシャンがこの小さな店でライブをやったことがわかる。なんと、クリスチャン・マークレイもかつてここで演奏していた。'99年の来日公演はぼくも吉祥寺で聴いたのだ。その衝撃はいまだ忘れられない。そのとき彼はここでもプレイしたんだ!この空間でマークレイが何台ものターンテーブルに乗せたレコードたちをこすりまくっているのを想像して、ぼくは震えてしまう。
マスターにそのことを伝える。彼もクリスチャン・マークレイに大きな衝撃を受けたのだという。それで自分の店でライブをやってもらったのだそうだ。
マスターはぼくらのためにマークレイのLPをかけてくれる。このレコードの再発盤はぼくも持っているが、もともとジャケットに入っていないむき出しのレコードで、保管するうちに付いた傷も音楽のうちだという素敵なメッセージを持つ。マスターは勿論、オリジナル盤でかけてくれたよ。
ブチブチ、プツプツと続くレコードのスクラッチ・ノイズに続いて導き出される古今東西世界の音・音・音!現代音楽(ヒップ・ホップ)表現の極北であり奇跡的美しさをたたえている。
コーヒーの味も忘れるほどに刺激的だった。

みんなと函館のライブハウスで最高の時を共有するちょっと前、ぼくらはこんな素敵な短い時間をこっそりと過ごしていたってわけ。
これも今夜のライブが最高だった原因のひとつかもね。