日記(ひさしぶりの)

ひさしぶりの日記って、なにを書いてよいやら迷ってしまう。
やっぱり日記は毎日つけないと、ダメだね。書きたいことが増えすぎちゃって、結局なにも書けなくなるんだ。

この一週間くらい、ぼくはずっと音楽浸けの毎日を送っていた。自分の新しいアルバムもできてきたし、エレキコミックのアルバムも作った。
エレキコミックのアルバムは、自分でほぼすべての曲を作詞作曲(1曲だけエレキコミックのやついクンの作詞)してプロデュースした初めてのアルバムになった。彼らはミュージシャンじゃなくてお笑い芸人だから、本当に「楽しい」というところに焦点を絞って制作することができる。「楽しい」はロックのいちばん大きな部分であるからして、そこをもういちど見つめなおすのは自分にとって新鮮な勉強だ。
このアルバムと自分のアルバムを、夏には同時発売したいと思っている。

一昨日の仙台ARABAKI ROCK FESも最高の一日だった。
いろんなミュージシャンに逢えたし、いろんなライブを聴くことができた。
久々に観たイースタン・ユースのステージには心が震えた。人間が発することのできるパワーの最大・最良の部分がつまったロックだった。吉野さんが「ワン、ツー、スリー、フォー」と全身全霊で叫ぶとき、そこには真実が確実に見えるんだ。
銀杏ボーイズのステージにもただひたすら泣けた。こんな人たちがいると思って、嬉しかった。彼らがいるから、ぼくはロックをまだまだ聴くだろう。銀杏のライブが始まる直前に、ステージの上空を大きな鷹がゆっくりと旋回していた。
そんな、一日の記憶。

夕べは仙台の素敵なカフェ、sunny dropsでライブ。本番前に食べさせてもらったカレーがすごく美味しく、気合いが入る。
ライブはマイクを使わず、完全にアンプラグドで行なわれた。こういうのもたまにはいいよね。
アコースティック・ソルジャー・ツアーはこんなふうに、人間の肉声だけでどこまで巨大なバンドサウンドに迫れるか、そしていかにして電気化されたものに勝てるか、そんなことを考えながらやっていきたい。
電気が使われる前の、産業が成り立つずっと以前の、原始のロックンロールにもどってみたいのだ。
この日は、指を切ってちょっと血が出た。ギターについたちいさな赤い斑点が、なかなかきれいだった。

そして今夜の札幌の小学校。昭和20年代に建てられた廃校になったばかりの木造のでっかい校舎は、ついさっきまで子どもたちがいたことが感じられる清らかなオーラにつつまれていた。
5月の陽射しがさす音楽室で、明かりをともさず演奏した。ゆっくりと暗くなっていく音楽室で光を感じながらうたう。
途中でピアノも弾いた、昭和48年寄贈と書かれたKAWAIのアップライト・ピアノは素朴で、しっかりしていて、そしてあたたかい音がした。これを素晴らしい音っていうのだな。何千万円もするグランド・ピアノも弾いたことがあるけど、そんなのよりこんなふうにその場所に鳴るべくして鳴っているものが、素晴らしい。
とにかくライブが終わるころには、もう真っ暗になった音楽室。小さなろうそくだけがいくつか光っている。
最後はSTARSをみんなでうたった。
教室の後ろの壁にはベートーベンやモーツァルトをはじめとする偉大な音楽家たちの肖像画。ずらっと並んだ彼らは今日のことを見てどう思っただろうか。
すくなくともこの教室でこんなロックンロールが奏でられたのは、初めてのことだろうから。