日記

夕方、タクシーに乗ってオフィスへ向かう。ハルコを連れて。

今日はモモちゃんはお腹のこともあって、急遽病院へ行くことになった。
だから、ぼくは朝からハルコといっしょに世田谷区民ホールへ人形劇を見に行ったのだ。これはまえから決まっていた幼稚園の行事。

とても眠い。ここ最近あまり眠れていない。部屋もめちゃくちゃになってきた。なんとかしなきゃと思って、日々は過ぎてゆく。

タクシーの運転手が道を間違える。
ぼくが正しい道順のことを告げると、彼は「知らねえなあ」と答える。
ぼくは「あんたが道知らないだけでしょ」と語気を強めた。

車は目的地に着く。料金は1220円。
初老の運転手がぼくに言う。「道を間違えて申し訳ありませんでした。お代は千円でけっこうです」と。丁寧過ぎるほど丁寧に頭を下げる。ぼくの父と同じくらいの年齢の彼が、そのときのっぺらぼうの人形のようにぼくには感じられた。
「なんて事を言ってしまったんだ」と、ぼくは思う。

1220円を払って、タクシーを降りる。
ばくはそっとハルコの手を引いて、オフィスのドアを開ける。