春の日に、ぼくたちは

ツアーから帰ってきたら、東京はもう春の陽射しだった。
早朝、世田谷に桜の花の幻影を見た。

このところ、本の編集作業の方もあって、あまり日記を更新してなかった。
なにから書こう。

そうだ、ツアーに出かける直前まで、ぼくはDVDやら本やら新しい12インチやらで、すっごいバタバタしてた。
ツアー前日には、DVD編集中のディレクター宅で深夜眠ってしまい、起きると朝。
その出発の朝は、下北沢CCCにてミーティングだったのだけど、家に帰ったらぶっ倒れてしまい、寝過ごしてしまった。みんなには本当に申し訳ないことをした。
リビングの床で泥のように寝ているときにぼくが見たのは、妻が大鶴義丹と浮気する夢。うなされて目覚め、後に確認すると、そのとき「こたえてちょーだい」に大鶴義丹がコメンテーターとして出てたのだった。
ああ、フロイトに遥か遠き、我が夢の短絡さ。

そうやって東京を発ったから、バンドワゴンの中はちょっとした遠足気分だった。
CCCでパスタランチを食べ、車に乗り込む。
山本直樹のマンガを回し読みし、出発寸前に下北沢ディスクユニオンで購入した映画『アメリカンハードコア』のDVDを観る。一気に沸点に。
そのあともブラック・サバスのドキュメンタリーや、カーティスのあったかすぎるグルーヴのスタジオライブなどを観る。
そう、バンドワゴンの車内には液晶モニターがついているのだ。こういうときのために。
そして映画『スクール・オブ・ロック』が始まるころには、もう夜。
ぼくはそのまま眠ってしまった。

真夜中に目を覚ます。
淡路島で給油のためにいったん高速を降りる。
見渡す限りの田んぼと畑の中を走る一本道で車を止める。一面の闇。
ぼくたちは冷たい夜の中に出る。
空を見上げたら、星がめちゃくちゃたくさん、はっきりと輝いてた。
きれいだった。

ライブは福山も大阪も本当に最高。
あたらしい挑戦もいろいろとできたし、なによりお客さんが素敵だった。

大阪のライブが終わり、軽く打ち上げして、ぼくらはまたバンドワゴンに乗り込む。さよならさよなら、また来るよ。
帰路につく前の腹ごしらえは、「天下一品」のラーメンで。
車の中で、「天下一品」のこってりラーメンのあのドロドロのスープは一体何でできているのか、みんなで推理する。
そんなことをしているうちに、みんな就寝したようだ。

子どものころ、ぼくは集団行動がすごく苦手だった。
いつのまにか、中学生の修学旅行みたいなものが、また好きになってる自分に気付く。

そして街が動き出すころ、春の日だまりのなかの東京に、また戻って来る。