変身

何年か前から、マンションでコガネムシを見かける。
たいてい、マンションの外壁に身動きひとつせずぽつんととまっている。

今日もお昼に、玄関を出たすぐのところにじっとしており、ついふんづけそうになる。
ハルコは、こわぁい、とたじろいでいる。うみも、こわぁい、と真似して言う。最近下の子は、ハルコが言ったほとんどのことを、繰り返すようになった。
虫もがんばって生きてるんだから、そんなふうに言ったらダメだぞ、とぼくは叱る。自分にも、完全にこわい虫とかがいることをよそに。
緑に輝くその体を、指先でつついてみる。足が、もぞもぞ、と動く。
このキラキラした生物は、死んでるわけじゃないのだ。
彼らはいったい、こんな世田谷区のマンションで、なにをやってるんだろう。

夜、帰宅したときに、向かいの部屋のほうに、数十センチ移動していた。