九月の現状

淳を抱くことが多い。
ハルコのときもうみのときも、生後数ヶ月は自分で抱くことは少なかったのだが。
男の子を抱いてみると、生後2ヶ月とはいえ、力がすごく強いことがわかる。
女の子とはくらべものにならない。
あぁ、男ははじめから女をまもるために強い筋力がそなわってるのだなぁ、などと勝手な納得をする。
「ママをまもってあげろよー」などと、小声でふたたび勝手なことをささやいてみたりする。


あたらしい事務所に移って2ヶ月経った。
まだ2ヶ月、という感覚。
もう1年くらい過ぎた気がする。
あと数日もすると、あたらしいスタッフが入ってくる。

引っ越したばかりのときに、家全体にツタを絡ませようなどという野望があり、家の裏手のツタの茂みから三階のベランダへ麻ヒモを渡したりしていた。
ツタは夏の間黙々と成長して、少しづつ家の壁を覆おうとしている。
すでに三階のベランダにも、ツタの緑の触手は届き始めている。


ソウル・フラワー・ユニオンから新作『カンテ・ディアスポラ』が届く。
朝、その歓喜に溢れた祝祭のファンファーレロックを聴きながら、事務所の掃除。
一曲目から人生が大爆発するようなロックンロール。
最高にいい気分になる。
天気は秋晴れ。
ソウル・フラワーはもうこんなアルバム作らないって思っていた。
もっと地道な、大人の、渋い、優良なアルバムを作っていくのだと思っていた。
ここにあるのはとりもなおさず、まっさらの歌たちだ。
20年前、ニューエスト・モデルの音楽を最初に聴いて脳みそをぶっ飛ばされたときとまったく同じ気持ちである。
プライマルスクリームとかCSSとかシミアンモバイルなんちゃらとかの外国の歌を悶々と聴いてるよりずっといい。
何言ってるのかビシビシ届く。

「ラヴィエベル 人生は ラヴィエベル 素晴らしい
 ラヴィエベル 人生は ラヴィエベル クソッタレ」

こんなことを、中川敬が歌っている。


九月のぼくの人生も、少しづつ変わっていく。