五月の雨の朝
午前6時前、大阪から自宅へ戻る。
すぐに、日課であるウォーキング。
小雨が降っている。
コースである家の近くの緑道は、今日はハードコアなランナー以外は人影もまばら。
原発の報道があるし、最近は雨の日は少しだけ体が緊張する。
モスグリーンのレインコートを羽織ったぼくは、歩き始める。
ヘッドフォンからはMUTE BEAT "LOVERS ROCK"。
湿度が高いためだろう、緑道沿いに咲き誇る花々の匂いが、むんと鼻をつく。
こだまさんのトランペットがそんな朝をやさしく引き裂く。
裂け目から、本当の世界が溢れ出す。
放射能の雨や、ぼくらを取り巻く色とりどりの情報の向こうにある、静かな世界が。
五月の雨の朝には、花の匂いがとても素晴らしいのだ。
それは性的ですらあるのだ。
ビートに乗ってぼくは歩き続ける。