ノース・マリン・ドライヴ

最近は布団に入ると、枕元に携帯を置いて、ちっちゃな音で音楽を流しながら寝る。
こんな梅雨時には、ベン・ワット『ノース・マリン・ドライヴ』あたりがぴったりくる。


そうしていると、遠い昔のことを想い出す。
深夜のラジオを聴きながら寝ていた、10代の前半の頃の感覚だ。
貧弱なスピーカーに耳をすませば、世界全体の音が聴こえてきた、あの真夜中の感じ。


ちかごろ世では、音質や聴き方捉え方、音楽についてさまざまなことが懸念されているが、なんのことはない。耳を澄ませばそこに音楽はちゃんとある。


ぼくのiPhoneの約2ミリ×1.5ミリのスピーカーから、ベン・ワットのひそやかな息継ぎも、ギターにかかった揺れるリバーブもはっきりと聴きとることができる。
うとうとするころには、彼が立つ寒々しいビーチの波の音までも耳に届くようだ。