オクノさんのこと
ときにあたりまえに感じてしまう「うたう」って行為を、もういちど立ち止まって考えさせてくれるのが、オクノ修さんの『唄う人』というアルバム。
先日の京大西部講堂の<ボロフェスタ>は、西部講堂内にふたつのステージが設けられていて、ぼくらがセッティングをしているときには、もうひとつのステージでオクノさんが歌っていた。
ぼくはオクノさんが出られることを知らなかったので、その初冬の風のように凛としたその声をライブ前せかせかとセッティングしているときに聴いて、おもわず作業の手が止まってしまった。
オクノさんは70年代のフォークの時代から歌っていて、今はコーヒー屋のマスターでもある。
京都の<六曜社>でオクノさんがいれてくれるコーヒーは、まじめな味でとても美味しい。ほっと心がほぐれる。
オクノさんは、曲の中で、自分がなにを思ったのか、どう感じたのか、そしてなぜそのことを歌うのか、ということを歌う。
あたりまえのことかもしれないけど、ひたむきにそのことに向かうオクノさんの声は、歌うという行為をしていることがとても幸せそうで、そしてちょっとエロティックでもある。